“企業に保健師”がアタリマエの社会を目指して―わたしたちが産業保健師になった理由、やりがい、社会的意義―

写真:インタビュー風景(東京・大阪でリモートにて実施)
社会的な認知が広がってきた『産業医』。産業医同様に、安全・健康に働ける職場環境づくりにおいて大切な役割をはたしている『産業保健師』という仕事についてご存じでしょうか?
今回は産業保健師のお仕事や企業が産業保健師を導入する意義などについて、エムステージの産業保健師 佐々木さん、本田さんにお話を聞きました。
株式会社エムステージ 産業保健事業部 産業保健師 佐々木さん(写真右)
看護師として救命救急と内科で勤務。その後、臓器移植事業に携わったのち、産業保健師となる。企業の専属産業保健師を経て、2020年4月エムステージ 大阪支社入社。産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わる。
株式会社エムステージ 産業保健事業部 産業保健師 本田さん(写真左)
看護師として精神科で勤務したのち、2020年4月エムステージ 東京本社入社。産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わる。
産業医よりも身近な医療の専門家として、企業にきめ細やかな産業保健活動を
――産業保健師とはどのようなお仕事なのでしょうか。
佐々木:企業に訪問し、勤務する従業員のみなさんの健康管理を行っています。具体的には健康診断の事後措置、例えば、結果に応じた受診勧奨や保健指導の面談実施などです。企業に訪問しない日は、エムステージで毎月の衛生委員会でお話する健康に関する講話の資料や研修資料の作成などを行っています。
――企業が産業保健師を導入する意義はなんでしょうか。産業医との違いについて、イメージがつきにくいのですが・・・。
佐々木:きめ細やかな対応が出来ることが、保健師のメリットです。産業医が常駐していない場合、産業医の契約時間も限られているため、法定の業務で終わってしまうことも少なくありません。保健師がいれば、企業の状況に合わせた必要なケアを保健師にて実施することが出来ます。
本田:そうですね、佐々木さんがおっしゃるように対応時間が十分にとれるようになりますよね。また保健師は、産業医よりも従業員や人事労務の担当者が気軽に相談できる距離感だというのも大きいと思います。気軽に相談してもらえることで、健康状態が悪化する前に早めの把握、対応が可能になります。
――なるほど。より身近な医療の専門家という立ち位置なのですね。具体的にはどんなお仕事をしているか聞かせてもらえますか。
本田:わたしは2社に訪問しています。企業のニーズに合わせ、1社は週2日、もう1社は月1日の訪問です。他の日はエムステージで勤務しています。
企業では健康診断の結果を重症度に応じて整理し、産業医に報告。問題があると産業医が判断した従業員を、医療機関へつなぐなどの業務をしています。月80時間以上の長時間労働者に対してチェックシートを配布し、状況や希望に応じて産業医面談を設定することも業務の一つです。今後は従業員の健康相談まで広げていけたらと思っています。
佐々木:わたしも2社訪問していて、同様に企業ニーズに合わせて1社は週4回、もう1社は月1回です。
企業では従業員の方の健康診断の対応や、生活指導の面談をしたりしています。健康診断の結果で至急対応が必要な人にどうアプローチするのかを産業医や担当者と相談したり、産業医が就業判定を行う前の事前整理をしたりなど、連携して動く業務も多いです。
企業にいることの方が多いですが、エムステージへの出社日には保健師全員でのミーディングで他のメンバーとコミュニケーションを取っています。
――生活指導の面談とは、どういうことをされるのですか?
佐々木:たとえば健康診断でコレステロール値が高い等の異常があった方に、面談を通してご自身の生活を振り返ってもらう棚おろしの場を提供しています。ご本人へご自身の生活習慣についての気づきを促し、来年の健康診断までの生活改善目標を一緒に立てることでより健康的な生活への変化をうながします。
――長時間労働者のチェックや生活指導の面談。企業によって活動の内容が異なるのですね。
本田:はい、業種や企業によって、課題が異なるため、各社ごとにカスタマイズした活動が重要になります。全く同じというものはありません。例えば広告業では繁忙期になると急に労働時間が増えるため、長時間労働やそれに伴うフィジカル・メンタルヘルスの問題が発生するケースが多いです。
佐々木:わたしが専属産業保健師からエムステージに転職したのも、複数事業所に携われることで多くのケースを学べると思ったからです。
本田:あ、分かります分かります。わたしも色んな企業を知って幅広い経験が積みたくて、エムステージの保健師になりました。

病気になる前の段階で関われていたら―。臨床を経験したからこその想い
――どうして保健師を目指されたのか、エムステージに入社されたのかをもう少し詳しく伺えますか。
佐々木:わたしはもともと、人の役に立ちたいという思いが強くて看護師になりました。その後、亡くなられる人の最後の思い、最後の希望である臓器移植に携わりたいと思うようになり、臓器移植事業に携わりました。そこで日々の生活習慣に気を付けていれば防げたかもしれない働き盛りの人がたくさん亡くなっていくのを見て・・・。命にかかわる前の予防の段階に貢献できれば、と産業保健師になりました。1社専属でしたので、色々な企業を経験して保健師として成長したいなとエムステージに入社しました。
本田:わたしは5年間、精神科で勤務していたのですが、うつ病、適応障害、双極性障害などの方とお話する中で上司や同僚の理解がないな、というのをすごく感じたんです。「がんばれ」、「なんとかなるだろう」といった言葉がけに苦しみ、症状を悪化させた患者の方が多くいらっしゃいました。周りがもう少し精神分野について正しい知識を持って対応していたら、入院するほど悪化はしなかったかもしれない。精神科で学んだ知識を、企業で活かせたらと思ったんです。
また、プライベートでは子供が生まれて、夜勤のある生活を見直そうと思ったこともキャリアチェンジの理由です。
――おふたりとも、病気になる前に関わりたいと思われるきっかけがあったのですね。数ある企業の中から、エムステージに入社されたのはどうしてですか。
本田:わたしは産業保健師としては未経験でこの業界に入りましたが、面接では未経験でもこれまでやってきたことを評価してもらえたということが大きいです。他の企業のやり方を知らないからこそ、フラットに一から、あるべき産業保健師像のマニュアルを作っていきたい、事業立ち上げ1年目を一緒に成長していける仲間を求めている、という事業部長の人間性にも惹かれました。
佐々木:わたしもエムステージはこれまで産業医事業を中心にしていて、産業保健師事業は立ち上げ段階ということもあり、エムステージという会社の存在自体を知りませんでした。ですが、面接で事業部長と話す中で、保健師のスキルを大切にしてくれている、保健師を社会的価値があるものとしてとらえてくれているんだなということを感じました。
実務を行いながら産業保健師の教育を受けることができるという点もポイントでした。保健師の教育まで手厚いところは、なかなか聞かないので。
――確かに看護師や行政保健師をされていた方など、産業保健師としては未経験の方も多いですよね。保健師チームとしてはいかがですか。
本田:20~30代の割と年齢が近いメンバーなので、同じ目線で気軽に相談したり困りごとを話せる環境なのは心強いです。専門的な部分は経験豊富な顧問保健師がいるので、常にアドバイスを貰え、産業保健師として日々成長している実感があります。
佐々木:わたしも人間関係が良好なのは嬉しいです。また費用の支援体制など会社全体としてすごく勉強することを応援する風土があって、モチベーションが上がります。保健師チームもまだ受験していないメンバーで次回の日本産業衛生学会の産業保健看護専門家制度登録者認定試験を受検する予定です。
――エムステージに入社して、プライベートの変化もありましたか?
本田: 私は前職が看護師だったのですが、なかなか看護師ではテレワークはできません。エムステージでは事務作業の日はテレワークが出来るので、夜勤がなくなったことと合わせて子育てにかかわれる時間がとても増え、家族が喜んでいます。
エムステージは柔軟な働き方や適正な労働時間管理、モチベーションと生産性を上げる制度など、企業の健康経営を支えるという立場から意思をもって取り組んでいる印象です。

――今後、個人として、組織として、実現したい目標はありますか?
佐々木:個人としては、より幅広い知識と経験を兼ね備えて、それぞれの企業のニーズに合った保健師活動が出来る産業保健師になりたいですね。
組織として実現したいことは、社会ではまだまだ産業保健師の意義については知られていないと思うので、わたしたちの仕事を通して認知度を上げて、「企業には産業保健師が必要だ」と社会が当たり前に思うような存在になっていきたいですね。そのためには、“保健師はこんなことができる。こんな風に会社が変わっていくんだ。”ということを示していくことも求められているんだと思います。
本田:わたしは未経験からスタートしているので、まずは1年を通して担当企業を理解し、土台となる知識を身につけていきたいです。その上で、2年目以降は多くの企業対応や社内事例から得た知見をより積極的に提供していきたいです。
産業保健師の認知を上げていくという点においては、従業員数50名以下の、産業医の選任義務のない企業でこそ産業保健師が必要だと思っています。従業員数が少ないからと言って、健康に問題を抱える社員がゼロというわけではありません。そうした企業で、気軽に相談したり知見を得られる存在として産業保健師を活用してもらえる社会をつくっていきたいと思っています。
――お話ありがとうございました。
ウィズコロナといわれるこれからの時代、社会や働き方の変化は新たな健康問題へのつながりも指摘されています。 身近な専門家として、産業保健師という存在が企業でより活躍の場を広げられるよう、エムステージは今後も産業保健師サービスを社会に広げていきます。
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